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【感想】9/12 中村佳穂 @ LIVEWIRE

 

中村佳穂の配信ライブをLIVEWIREで観た。本当に心からすばらしいと言える内容ではあったのだが、おそらくは事前収録だったと思われる。そしてそのことは現時点でもアナウンスされていない。

会場は京都のライブハウスUrBANGUILD。映像は星野源の「Pop Virus」のMVを手掛けた林響太郎が担当。バンドメンバーは中村佳穂、西田修大、荒木正比呂、石若駿、角銅真実、磯部舞子、林田順平。中村佳穂BANDの2人にドラムの石若駿と角銅真実、そして弦楽が加わった編成だった。

ただ、これらのメンバーは終演後のスタッフロールで判明しただけで、映像にはほとんど登場しなかった。また基本的に全体の8割は本人の弾き語りで、バンド自体ほとんど登場することはなかった。

セットリストは以下。ナタリーからの引用。ただセットリストを見たところであまり意味はない気もする。

 

中村佳穂が配信ライブで見せた、ワンカットで映し出された音楽という魔法(ライブレポート / 写真10枚) - 音楽ナタリー

  1. adlib solo
  2. 口うつしロマンス
  3. きっとね!
  4. Rukakan Town
  5. SHE'S GONE
  6. シャロン
  7. 忘れっぽい天使
  8. You may they
  9. アイミル
  10. 新曲

 

今でも混乱しているのだが、とりあえずいくつかの点にわけて感想を書くことにした。

 

1. 中村佳穂の弾き語りがすごかった

とにかく演奏が頭がおかしくなるくらいすごかったというのが率直な感想。実際頭がおかしくなってその後何もできなくなりその日は早寝した。僕は中村佳穂については演奏を実際に目撃したことはなく、昨年のリキッドのワンマンとフジロックの中継を観たことしかないのだが、バンドを従えた彼女のライブはすばらしいというレベルを超えたすばらしさがあった

ただ、今回は全体の8割は弾き語りだった。しかしむしろひとりの方が凄いのではないのか?と思いたくなるくらい弾き語りがぶっ飛んでいた。たとえるなら上原ひろみ矢野顕子が融合したみたいで、ものすごいテンションでピアノを弾きながら同時にリズムが導くままに歌を紡いでいた。

こう言ってはなんだが、少なくても今回はあまりお客に歌という完成品を届けることに重きをおいていないように見えた。「私は私の歌で好き勝手に遊びけど、それをあなたも楽しんでくれたらうれしい」みたいな、ある意味少し乱暴な客に対する信頼があったのではないかと思う。

演奏中ずっと彼女は笑っていた。それを見て僕も彼女と同じように音楽と戯れたような気持ちになれた。それは間違いなく素晴らしい体験だった。

 

2. 映像がすごかった

映像は全編ワンカットで常に中村佳穂を映し出していた。近い時はおそらく1m以内でカメラを構えていたのではないか、というほどの近距離。位置が固定されているわけではなく、おそらくは手持ちのカメラであらゆる角度から彼女の演奏する映し出していたのだが、それに対して彼女は一度も邪魔な素振りをしていなかった。それは彼女の集中力が凄いのか、綿密なリハーサルを重ねたのか、撮影側の技術が優れていたのかはわからない。

ただその結果、僕らは本来のライブでも不可能と思えるほどの近い距離で彼女の演奏を見ることができた。その中で彼女は、お客というものをあまり意識することなく音楽に集中していたように見えた。

 

3. 事前収録だったのではないかという疑念

しかし終盤、ピアノの前から離れ舞台を駆ける中村佳穂の横を動き回る謎のコマが出現した。最初に見た時は現実で行われている演出なのかCGなのかが判断できなかったのだが、エンドロールで3DCGのスタッフの存在が確認された。

ただ、次に浮かんだ疑問は果たしてこれは生放送なのか?それとも事前収録されたものなのか?ということだった。

それについては舞台となった京都UrBANGUILDのスケジュールを確認すると放送日の9/12には別のイベントが入っていたので、生放送ではなかったと推測できる。スケジュール上では9/9が貸切になっていたので、おそらくその日が収録日だったのだろう。

 

http://urbanguild.net/events/リスト/?tribe_paged=1&tribe_event_display=past&tribe-bar-date=2020-09-15

9/9 (wed) 貸切
09/09・08:00 〜23:00
貸切です Private Party

9/12 (sat) FOuR DANCERS vol.175~dance performance night~
09/12・19:00 〜22:30

 

僕はその3DCGのコマを見てクリストファー・ノーランの映画「インセプション」が思い浮かんだ。この映画は仮想現実の世界が舞台で、現実と仮想現実を見分ける際にコマを用いる。コマを回しそれが自然に止まれば現実であることを意味し、コマが回り続ければ仮想現実であることを意味する。 

インセプション (字幕版)

インセプション (字幕版)

  • 発売日: 2013/11/26
  • メディア: Prime Video
 

画面上にはいくつものコマが現れ、それらは一度も止まること無く画面上を駆け回っていた。これはこの配信ライブが現実ではないことを意味しているのではないだろうか?これらのコマがライブの終盤にあらわれたことは、この配信が実際に生放送されているものではないことのネタばらしだったと今になっては思う。しかし見ている最中はコマが3DCGなのかすら判断できず、仮に3DCGだとしてもそれが放送と同時に書き込まれたものなのかさえ判断できなかった。それほどまでに僕は、中村佳穂の演奏と映像にやられていた。

 

ここで一つの疑問が思い浮かぶ。それはライブの定義についてだ。これが既存の意味なら「実在する観客の前で実際に目の前で演奏すること」がライブを意味していただろう。しかし配信ライブは、現段階においては、「ネットワークを介して視聴者にリアルタイムの演奏を届ける」を意味しているとは限らないのかもしれない。とはいえ少なくても今回の放送までは、ライブ配信とはライブの生中継であると自分は思っていた。

ただ、今回の映像が事前収録だと仮定して、それを放送と同時に多くの視聴者が楽しめばそれは配信ライブと呼べるのではないか?と思わないこともない。しかしそれでもやはり事前収録をアナウンスすべきだった、とも思う。

とはいえ観ている最中はそんな些細なことは気にせず、この素晴らしい演奏と映像を堪能した。生放送であることにこだわらなければ文句なしの映像作品であることは間違いない。ソフト化されるとは思うものの現段階ではその確証はないので、気になる人は9/22までアーカイブが公開されているのでチケットを購入して見るべきです。内容は保証します。とんでもない映像作品です。